世界の定年制―アジア~アメリカ~ヨーロッパ―

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定年制の話をするときに引き合いに出されるのが、政治の世界。政党によって、候補者として公認時に73歳未満(自民党衆議院比例区)、任期満了時に70歳以下(民主党衆議院)などの取決めもありますが、本人にその気があって有権者の支持があれば、いくつまででも続けられないことはありません。

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昨年行われた第23回参議院議員選挙の当選者の年齢を見ると、最年長は74歳でした。参議院議員の任期は6年ですから、最年長の議員は任期満了時80歳ということになります。ちなみにこれまでの最高齢議員は、明治から戦後まで63年間に渡って衆議院議員を務めた尾崎行雄。引退したのは94歳の時でした。時代背景や当時の平均寿命などを考えると、驚異的な年齢です。

70歳、80歳でも現役というのは、ビジネスの世界と比べると随分長く現役を続けられる…という感があります。ただ、政治家にはしかるべき経験が求められるので年長者が多いと考えるとすれば、比較するのは企業でも一般社員ではなく役員ということになるのでしょう。そこで、産労総合研究所の「役員報酬に関する調査 2013年」を見てみると、社長に定年があるという企業は全体の35.4%で定年年齢は平均66.8歳。会長については、定年がある企業が21.5%でその平均は69.2歳です。このデータと比べると、やはりビジネスの世界と政治の世界にはズレがある…という気がしないでもありません。

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日本では定年があるのが当たり前という感覚がありますが、世界では定年制度が禁じられている国もあります。アメリカでは年齢を理由とする事業主の差別行為は禁止されており、航空機のパイロットやバスの運転手など例外的に定年制を設けることが許される職業がある以外は、年齢を理由に労働者・雇用者を退職させることはできません。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも同様に定年制は禁じられており、イギリスでも2011年10月から定年制が廃止されました。イギリスが定年制を廃止した背景には、高齢化の進展に伴う年金支給開始年齢の引き上げがあるそうですが、どちらかと言えば、これらの国では、労働者が年齢に関わりなく働くことのできる権利を保障・保護するために定年制が禁じられている、と言えそうです。

一方、ヨーロッパ諸国の多くでは、日本と同様に年金受給開始年齢に関連付けられて定年が決められています。フランス、ドイツ、オランダ、オーストラリア、スイス等々の国では、年金支給開始年齢=定年という考え方が定着しており、現在は概ね65歳。ただし年金支給開始年齢の引き上げが決まっている国では、定年年齢も引き上げが予定されています。

アジアにおいては、経済成長を続けている国が多く、また日本やヨーロッパ諸国のように高齢化が社会問題化しているという状況にはないため、定年が法律で定められている国は多くはありません。法定定年年齢が設けられているのは、韓国(55歳)、台湾(65歳)、シンガポール(62歳)、マレーシア(60歳)など。ただ、これらの国々では、将来の高齢化を見据えた定年の延長や再雇用の促進策が近年とられるようになってきており、韓国では2016年1月までに定年年齢を60歳以上に引き上げることが法律で義務付けられました。

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スポーツや政治の世界は、定年制があるにせよないにせよ、ある程度実力本位の面がありますが、一般社会ではそうはいきません。何歳まで働き続けられるか、働き続けなければならないか… それぞれの国の文化的背景、社会保障政策、人口構成など様々な問題が絡んでいます。

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