消滅可能性都市―日本の49.8%がその可能性内に―

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先月、日本創成会議が2040年までに日本全体の49.8%にのぼる896自治体が消滅する恐れがある、と発表し注目を集めています。

青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県の5県では、人口消滅可能性自治体が8割以上にのぼり、他の24道県でも5割以上に達するとのこと。東京都においても、豊島区が“消滅可能性都市”であるとされ、区長が定例会見で「なぜ豊島区が、と大変驚いた」とコメント。推計は人口が減少している時のデータをもとにしたものであり、現在の人口は増加に転じている、住みたい街のランキングでも上位にあがっている…などと反論する声も大きいそうです。(J-Castニュース 2014/5/9)

国立社会保障・人口問題研究所

この推計は、人口の再生産を中心的に担う20-39歳の女性の人口に着目したものです。この若年女性人口が増えない限り人口の再生産力は低下し続ける=人口減少は止まらない、として、日本創成会議は、若者や女性が活躍できる社会の実現を目指すための提言「ストップ少子化・地方元気戦略」をまとめました。この提言の最初には、日本の人口減少問題の“不都合な真実を正確かつ冷静に認識することからすべては始まる”と書かれています。

そもそも、日本で少子化が問題視されたのは、1989年の厚生省(当時)の調査でひとりの女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)が過去最低の1.57人を記録したことに遡ります。この調査をきっかけに厚生省内に設けられた“これからの家庭と子育てに関する懇親会”では、「今世紀の残された短い時間の中で…子供が健やかに生まれ、育つための環境づくりが喫緊の課題となっている」という報告書もまとめられています。それから25年の歳月が経過しました。様々な指摘や提言がなされ、対策も施されてきたはずですが、少子化はストップがかかるどころか、益々加速しています。20年以上前から顕在化していた問題に対し、何ら有効な手が打てていないのです。国や地方自治体には、本当に効果のある施策を取ってほしい。そして、国民一人ひとりも、他人事ではなく自分たちの問題として認識するべきである。そんな背景から、このような、誰もができれば考えたくない、目をつぶってしまいたい、自分の住む町が将来無くなるかもしれないという“不都合な真実”が公表されたのではないでしょうか。

町が“消えて無くなる”かもしれないというのですから、言われた側は反発するでしょう。センセーショナルな数字ですから、人々が驚き話題にするのも当然です。しかし、重要なのは感情的に反論したり、推計の方法や精度の欠陥を指摘して現実的な話ではないなどと言うことではないはず。これ以上の問題の先送りでは、本当に国の将来が危ぶまれます。

幸い、

「女性が仕事を続け、結婚して子育てができる街として、豊島区を選んでもらえるよう全庁を挙げて取り組む」(豊島区高野区長、毎日新聞2014/5/30)

など、地方自治体も本腰をいれて対策を取ろうとしているようです。私たちも、自分たちの、そして子供や孫たちの将来が直接かかわっているという認識を持って“不都合な真実”を受け入れ、何ができるか、何が必要なのかを考えていく必要がありそうです。