高齢者で支える日本人の主食「コメ」の未来は?

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 日本の農業が大きな転換点を迎えています。TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉は大詰めを迎えており、これまで高関税で守られてきた農産品は国際競争に晒されることとなります。この状況を見据え、昨年末にはコメの減反制度の廃止と補助金の見直しも決定されました。しかし、農家の実態を見ると、日本の農業が生き残ることができるのかどうか、不安を感じざるを得ません。
 農林水産省によると、平成24年現在の農業就業人口の平均年齢は65.8歳。うち、農業を主たる仕事としている基幹的農業従事者の平均年齢は66.2歳に達しています。農業は、働く人の平均年齢が65歳を超えているという、もの凄い高齢化産業なのです。高齢化の状況をもう少し詳しく見てみましょう。
 2012年の基幹的農業従事者に占める65歳以上の割合は60%に達しています。30歳代・40歳代という企業でいえば働き盛りの年代は1割に過ぎません1990年には、既に60歳以上の割合がほぼ半数に達していたとはいえ、30歳代40歳代もそれぞれ1割以上には達していましたので、この20年で高齢化が非常に進んだことがわかります。

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資料:「平成24年度 食料・農業・農村白書」農林水産省

 さらに稲作農家に限ると、65歳以上の割合は74%を占めており、平均年齢はなんと70歳。日本人の主食であるコメの生産は、超シニアの農家が担っているというのが現実なのです。TPP反対であるとか、コメは聖域だと主張するばかりではなく、何か手を打たなくてはコメを作る人がいなくなってしまいかねません。
 若い就農者を増やし担い手を確保することは、コメに限らず農業全体にとって喫緊の課題です。最近はマスコミなどで、元気な若い農家の姿を目にすることも増えてはきましたが、まだまだ一部の話しに過ぎません。新規就農者は1990年から2000年までは増加傾向にあったのが、減少傾向に転じているそうです。そのような中で39歳以下の若い就農者はわずかながら増加傾向にあるようですが、「これら新規就農者の約3割は生計が安定しないことから5年以内に離農しており、定着するのは1万人程度となっている」(食料・農業・農村白書)とのこと。
 いくらヤル気があるからといって、安定的な収入が得られなくては農業に就こう、農家を継ごうと思う若者は増えるハズはありません。今回の補助金の見直しにより、農家の所得は「全国平均で13%増える」と政府では試算しているそうですが、それが根本的な解決策になるのでしょうか。
 実は、農家の中でも酪農や養豚は比較的高齢化率が低いのです。65歳以上の占める割合は、酪農で26%、養豚では31%。平均年齢も55.1歳と57.3歳です。これに関し、白書でも「酪農や養豚においては、経営規模の大きい農家が多く、農業所得も多い傾向にあることから後継者が確保されやすい」と述べています。よく言われることではありますが、やはり農業の大規模化が有効な解決策のひとつに違いないでしょう。20ha以上の農業経営体、いわゆる大規模農家が耕作する面積の割合は1990年から2010年の20年間に倍増し32%に達しました。法人経営体の数も2000年以降右肩上がりで増加しています。このような構造改革が手遅れにならないのを祈るばかりです。