高齢者向けシェアハウス、過疎地で普及視野

政府は高齢者向けの小規模シェアハウスを全国に展開する。「地方創生交付金」を活用して整備を支援する。老朽化が進む特別養護老人ホーム(特養)やリハビリテーションの施設を転換する。人口減少が進む過疎地で老後も安心して暮らせる環境をつくる。3日に開いた地方創生を議論する有識者会議で「地方創生2.0基本構想」の原案を示した。6月中をめどに取りまとめる。石破茂首相は地方創生を看板政策に掲げる。なかでも「小規模・地域共生ホーム型CCRC(生涯活躍のまち)」の普及に力を入れている。
(日本経済新聞 6月4日)

2025年度予算の地方創生交付金は2,000億円。24年度補正予算と合わせると3,000億円だ。石破政権が誕生して増額されたが、それでも、各自治体当たりではそれほど多くない。この予算で地方創生の実効性を上げるには、実施する事業の投資対効果が問われる。その意味では、小規模・地域共生ホーム型CCRCは波及効果が期待できる事業のひとつだ。多くの予算は、既存の特養やリハビリテーション施設の改修に費やされることにはなるが、その結果できる高齢者向けの小規模シェアハウスに高齢者が集まれば、地域経済にプラスの波及効果を与える。人口密度の低い過疎地に高齢者が分散して居住している場合、道路、ガス、水道、電気、郵便など社会インフラの維持コストは高い。訪問介護や訪問医療などの在宅介護の効率も悪い。高齢者が街の中心近くのシェアハウスに集まって居住すれば、住民サービスのコストを削減し、生産性を向上させることができる。

ただ、老健のような介護施設からシェアハウスに移行するということは、要支援の状態ではない人も居住するということだ。そうした健康な高齢者には、働き続けることを希望する人も多い。就労機会を拡大するためには、高齢者向けの仕事の多い地域にシェアハウスを作る必要がある。現在、地方の高齢者や中高年層の都会への流出を防ぐというのもCCRCの目的のひとつとされているが、就労を考慮するならば、市町村の枠を超えた、地域中核都市近郊への移住も視野に入れるべきだろう。