JR東海、定年65歳に延長 リニアなど事業拡大に対応

JR東海は27日、社員の定年を60歳から65歳に延長すると発表した。2020年4月から実施し、実施日時点で50歳以下の社員を対象とする。少子高齢化で採用環境が厳しくなるなか、60歳以上の経験豊富な人材を生かす狙い。
定年延長はJR各社の中で初めて。東海道新幹線やリニア中央新幹線の建設など将来的な事業の広がりを見据え、人手不足に対応する。
(中略)
定年延長に合わせて給与制度を見直し、50歳から60歳までの基本給の上昇を抑える代わりに60歳以上の給与水準の向上を確保する。
(日本経済新聞 6月27日)

鉄道業界は、全国的には、乗降客の逓減が長期に渡って継続し、先行きの成長を期待しにくいという市場環境の構造的な問題に直面しているが、大都市圏においては、インバウンド需要の拡大などにより、路線によっては売上が伸びている。JRグループの中では、特に、東海道新幹線というドル箱を持ち、名古屋駅周辺の不動産業も積極的に展開しているJR東海の収益力は高い。リニア中央新幹線が開通すれば、さらなる成長が期待できる。その分、人手不足も深刻になってきており、JRグループの中でJR東海が最初に定年延長に踏み切ったのは自然な帰結だ。名古屋近郊でJR東海と競合する名鉄は、1994年から定年を65歳にしている。国鉄時代の人員整理から成長へ向けた積極的な人材確保へ転換するには、営業地域が重なる私鉄との待遇差は放置できないという事情もある。

JR東海は、定年延長に伴い、50代の基本給の昇給幅を小さくして、人件費全体の上昇を抑えるというアプローチをとった。これは、国鉄時代から公務員と同様の年功序列の給与体系を持っていたJR各社にとっては、現実的な進め方だ。恐らく、JR東海以外のJR各社もこの制度を参考にして定年延長に取り組むだろう。そして、公務員の定年延長もまた、これを民間企業の先例として制度を設計する可能性が高い。