-第4回-高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)

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高年齢者の労働力化推進を法制度として後押しする高年齢者雇用安定法の制度趣旨と関連し、当コラム第2回では、高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)についてのご案内をさせていただきました。今回は、高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)についての概要をみてまいりたいと思います。

【1】高年齢者雇用安定助成金「高年齢者活用促進コース」と「高年齢者労働移動支援コース」の違い

両助成制度はいずれも高年齢者の労働力化推進を後押しするものですが、両者はそれぞれどのような目的のもと創設されているのかについて、確認しておきたいと思います。なお、両者ともその究極的な目的は「高年齢者の雇用の安定」にあることは、「高年齢者雇用安定法」の名称にも表れているところです。

 【「高年齢者活用促進コース」と「高年齢者労働移動支援コース」の違い】
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【2】高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)
‘①支給対象となる事業主の要件
下表に掲げる要件を満たした高年齢労働者(以下「対象労働者」といいます)を雇い入れた事業主が支給対象となる事業主です。また、事業主は対象労働者の出勤状況や賃金の支払状況等を明らかにする書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等)を整備・保管し、所管行政庁(地域障害者職業センター雇用支援課等)から提出を求められた場合には、それに応じることができなくてはなりません。
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②助成額の内容
本助成金(コース)の支給額は、支給対象者1人につき70万円となります(ただし、短時間労働者として雇い入れる場合については40万円。なお、ここでいう短時間労働者とは一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者をいいます)。

【3】受給手続きの流れ
高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)の助成金の支給を受けようとする事業主は、対象労働者を雇い入れた日の翌日から起算して6か月を経過した日から2か月以内に「高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)支給申請書」に必要な書類を添えて、事業所の所在地を管轄する都道府県の高齢・障害者雇用支援センターへ支給申請するようにしてください。
受給手続きの流れについては、以下のフローチャートをご参照ください。
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※『雇用関係助成金のご案内~雇用の安定のために~』(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)より抜粋
【4】本助成金に関する私見

いずれのコースも大企業、中小企業、零細企業を問わず活用できる助成制度ですが、助成金額から見ますと、労働移動支援コース(対象労働者一人あたり70万円)の方が助成対象となる労働者一人頭で考えますと、高年齢者活用促進コース(助成金額の算出要件にもよりますが、ここでは対象労働者一人あたり20万円とします)よりも、ずいぶんと手厚くなっています。これには、例えば、次のような理由が考えられます。

1.高年齢者活用促進コースは“面”で大企業における高年齢労働者の雇用促進を図るもので、労働移動支援コースは“点”で中小企業・零細企業の高年齢労働者の雇用促進を図るものである。

  高年齢者活用促進コースは自社に所属する高年齢労働者の有効活用を促進させるものですから、自社内にある程度の高年齢労働者が在籍していることを想定しています。従いまして、このような場合には、雇用を継続していくための賃金コスト等は当然、引き続くわけですが、採用コストなどが新たにかかるわけでありません。また、ある程度、自社内にまとまった数の高年齢労働者が存在しているため、掛け算をするとボリュームメリットがあります。
これに対して、労働移動支援コースは、いったん転職市場への流出しそうな高年齢労働者を、実際に転職市場へ流出する前に、引き続き勤労者として労働市場に留める設計となっています。また、助成対象となる高年齢労働者を職業紹介事業者経由にて採用すること、という要件もくっついています。従って、高年齢者活用促進コースと比べて、採用コストが企業側に生じることが想定されます(なお、無料職業紹介事業者によって就労することとなっても助成の対象とはなります)。また、さほど組織内に多くの高年齢労働者を抱えているわけではない企業にとっては、ある程度“点”であっても、助成金の額として魅力的なものを用意する必要があると思われます。このあたりに配慮して、採用企業側には助成金によって採用経費を実質カバーできる額を用意し、結果として職業紹介市場において、高年齢者がそうではない労働者と比較して殊更に不利益な結果とならないようにバランスをとっていると考えることができると思います。

2.早期に転職活動に舵をきり、高年齢労働者は自助によって転職を決めることができた高年齢労働者への助成の必要度合は少なく、ある程度の転職サポートが必要な高年齢労働者に助成金制度が活用できるようにされている。
  
それが上表にいう「移籍元事業所の定年に達する日から起算して1年前の日から当 該定年に達する日までの間に」移籍後の事業主(助成金を受給する事業縫い)と高年齢労働者との間で労働契約(採用内定を含む)を締結すること、という要件に表れていると感じます。
自社の定年を見越し、早期に転職活動を始め、転職先が決定できた高年齢者については助成の必要はなく、自社の定年を見越して、早期に転職活動を始めたのだけれど、なかなか転職先が決定しない、という高年齢労働者に対しては助成の仕組みを設けて就職を後押ししようとするものとなります。
また、高年齢者の人材としての評価は、調査によると大企業よりも中小企業の方が高い傾向があります。このような意味においても、助成額を考慮し、高年齢者への評価が高い中小企業の採用意欲を後押ししているとも考えることができると思います。

いずれにしましても、高年齢者雇用安定法とそこに関連する助成金の仕組みについて、これまでみてきたところを踏まえまして、次回はいったん総括をして、自社の高年齢者活用に対するスタンスを再考し、結果として助成金の支給申請時の留意点やこれからの自社における高年齢者活用策についての検討を加えて参りたいと思います。

※参考資料
厚生労働省WEBサイト:高年齢者雇用安定助成金(高年齢者労働移動支援コース)平成18年版『国民生活白書~多様な可能性に挑める社会に向けて~』第3章第2節