-第8回-内的キャリア、生き方、働き方の指針

個人と組織とが、新たな活性化をするために

「内的キャリア」の説明をするには「キャリア」とは、を説明しなければなりません。

キャリアとは-「仕事人生」

「キャリア」とは、仕事を通じて人が現在、過去、未来に亘って得る経験の累積。一言でいうと、仕事人生であり、仕事には、有償の職務から無償の奉仕まで含まれる。一人一人「キャリア」は異なるので、「私のキャリア」はその人の「思い」、を語ってもらうことで仕事内容が明らかになるが、単なる「キャリア」では内容は不明。職業の名前、職種、役割り、身分などは、外から見えるもので「外的キャリア」という。

外から見えないが、キャリアを設計する動機になるものが「内的キャリア」である。なぜその仕事につくか、同じ営業マンでも「人と折衝してモノを売り喜ばれるのが好き」という人もいれば「競争に勝つのがやりがい」「私は日本一の○○セールスマンに」という人もいるのはそれぞれの持っている「内的キャリア」が異なるからである。

内的キャリアについて、どのようなものがあると考えられるか、E.H.シャイン博士のキャリア・アンカーといわれる8つのカテゴリーがある。

1. 専門・職能別コンピタンス TF 2. 全般管理コンピタンス GM
3. 自立・独立 AU 4. 保障・安定
5. 企業家的創造性 EC 6. 奉仕、社会貢献 SV
7. 純粋な挑戦 CH 8. 生活様式 LS

(参考:「キャリア・アンカー」E.H.シャイン著、金井壽宏訳、白桃書房)

キャリア・アンカーとは-「職業選択における鎖」

シャイン博士はMITの自分のゼミの学生の卒業後の仕事の就き方、転職などについて、10数年にわたって追跡分析した結果、最初に5つのカテゴリーを発見し、その後3つ、合計8つの上記カテゴリーにたどり着いたと言われている。

キャリア・アンカーというのは、人が経験する職業選択において自分の付きたい仕事の特性にそれぞれの特徴があり、その職に就くことに拘りがあるので、そこから外れると碇を下している鎖に引き戻されるような感じを持つというアナロジーからきている。

先の営業マンの例でいうと、私は日本一の○○セールスマンになりたいというのは、①専門性の追求、にアンカーを持っていると考えられ、このような人は、②全般管理に関心が無く、昇格・昇給されるより今の仕事の専門家としての生き方を優先する。

私も中・高年になって大きな転職をした際に、キャリア開発の研修を受け、アンカー調べをしてみたが、その時の私は③自立、①専門性、⑥奉仕・貢献の3つが高く、こんなに幾つものアンカーがあってもいいのかと聞いたところ、最初のうちは、複数の山が発現することがあるが、だんだん、本当の自分に落ち着いていくだろうと言われた。その後、何回も研修を受けているうちに、③が、一番しっくりくるようになった。

シャイン博士も、大学の教授をしている時、学部長ポストに昇任する要請を受けたが、良く考えてみて、自分の研究から離れてマネジメント職に就くのは、落ち着かないし、自分らしくないと気付いたのでお断りした、と話しておられたことがある。

現在、学校から企業に就職する時に「就活」という障害物を越えなければならないが、それまでに自分の「内的キャリア」は何かを考えたことが無く、「外的キャリア」や、「外発的動機付け」だけで目標を定めようとするので、同じ有名企業に集中し、地味な有力企業を探し当てる自分の基準を持たないことが嘆かれています。

中・高年者の転職、再就職にあたって、改めて自分の内面を見つめ、本当に自分のやりたいことを考え「天からの呼び声」に応えること、まさに「天職」を探し直す経験をすることが、その後の長い人生に活力をもって生きぬくカギになるものと確信します。この勉強のやり方については、「キャリア開発」をキーワードとして、自ら研究してください。