-第5回-組織開発と活性化

個人と組織とが、新たな活性化をするために

「組織開発」という言葉は、現在の人事関係者であればたいてい知っていると思うが、一般には、あまり使われていないかもしれない。Organization Development(O.D)という言葉を私が聞いたのも、会社へ入って20年ぐらいたったころのことであった。

OD(組織開発)導入までの流れ

私は大阪の営業部の課長から兼任の次長になった年末近くに、大阪人事課の課長が私の机のそばにやってきて、

ちょっとお願いがあります、部長のご了解は頂いているのですが、ODという研修を、会社として取り上げようと思っているのですが、堤さんに先ずトライアル受講をしていただいて、是非いい評価をしていただき、全社的に導入しようと思っております。

こんなことを言われれば、誰でも愉快な気はしない。

ちょっと待ってくれ、そんな答が決まった話のモルモットするのは嫌だよ、それにこれから忘年会で営業としては一番忙しいときじゃないか。

というひと悶着があって、そこは人事も心得ていて、このテーマの背景、会社として思い切った活性化を図らねばならないが、人事・教育の担当者が行っても経営者の納得は得られない、営業の実力者がこれは面白そうだと言わなければ、ということで東西事業所から各1名を選んだ、ということが分かり、大体「ODって何なのだ」という本題に、ようやく移ることになったのであった。

それから、都会から離れた研修所に1週間缶詰になって、人と人が生でぶつかり合うという形の猛烈な研修を受けた事は、私の人生に相当のショックを与えたことは間違いありません。組織が人間の集団として共通の目的に向かって進むことが出来るためには、その集団のそれぞれ個人が、思い切った自己開示を経て、お互いの人間性を分かりあっていることが決定的に大切であること、を理解し自分の行動で表現できなければなりません。

この研修は1970年代の米国で開発され、日本でも導入された時期に私も受講したわけだが、私の会社では人事のもくろみ通り、私も組織の活性化に必要なことだという答申をし、大掛かりに各階層の研修が行われ、それなりの成果は上がったものと感じている。

時代から読み解く正しい組織活性化策とは

しかし、実態としてはその後に起こったバブルの崩壊、重厚長大企業、巨大銀行の崩壊により、大規模のM&A、文字通りのリストラクションの巨大な波にうち砕かれ、グローバルスタンダード、短期的成果主義の徹底等により、何が正しい組織活性化か、が見えなくなってしまったのである。

そして、今、世の中は2014年、21世紀が始まって以来10数年が経過しました。20世紀は人類が物理的に大成長をし、国家による資源の取り合い、大規模な戦争による殺戮を経て、このままでは地球規模の限界に到達することが明らかとなった世紀であったと言われています。そこで21世紀は「モノ」ではなく「こころ」の満足をお互いの理解、譲り合い、助け合いによって実現していくしかない世紀にあることを、ここで改めて想起しなければならないのではないだろうか。

組織活性化のためのOD(組織開発)

話が大きくなってしまったのだが、そこでわれわれが考えることは、仕事は個人と組織が協働して作り上げるものであり、その為には組織と個人の間でそれぞれの目標をもちこの摺合せを、ミクロのレベルで実践しなければならないということである。

これまでの企業経営では考えていなかったレベルの目的の共有であって、これまでの考え方で実現することは容易ではないだろう。先ず人の成長、自己実現をどのような形で実現するのかという目標を、実働する組織の最小の単位で共有しなければならない。

そのためには組織の活性化ができていなければならず、組織のメンバーが本音でコミュニケーションし、お互いがそれぞれを理解し協力し合う環境を作ることが前提条件であり、そのために、ODという手法が必要になってきたのだという理解をしていくことが必要となるだろう。ODの遠大な意味がお分かりになれただろうか。