-第2回-個人と組織との、パラダイムの転換

アイキャッチ「個人と組織とが、新たな活性化をするために」

私はこのところ原稿を集め、文集を作るという作業で追いまくられているのですが、どんな文集についてこの暑さの中で、そんなに熱を上げているのでしょうか。

 

数十年続く同期会

私たちは〇〇年前、ある製造メーカーに入社したのですが、その同期会というのが、会社の中・外でずっと続いていて、研究者、製造技術者、営業、管理、広報・宣伝、人事・教育に至るまで、会社の中のいろんな仕事をしている連中が数年に1回の同期会に集合し、その時々の社会や会社の問題点や、人間関係の嘆き節を交換し、土地の名産と温泉などを楽しみ、またの再会を誓って散会する、という会合が続いていたのです。ところが、寄る年波、足腰の衰え、お酒も飲めなくなるなど、集まる障害が高くなり、ついに今年でこの会もおしまいにしよう。しかし、このまま終わるのも残念だということで、記念文集作成の槍が、私にあたったという次第です。

みなさんはこの話を聴いて、どう思われますか。私の良く知っている新聞記者にこの話をしたところ、「信じられない」が第一声、次が「すごい」。そして、「高度成長期に苦労を共にされた仲間というのは一生続く素晴らしい体験だったのだとうらやましく思いました。「弊社の同期ではこのような、まとまりはありません」と返ってきました。

かつての個人と組織とのパラダイムとは

この記者の言う通りで、これが、今「個人と組織の関係のパラダイムの転換」が必要だ、という理由なのです。そのパラダイム、とはどんなものでしょうか。
バブルの崩壊に至る前の企業の人事採用は、以下のようなものでした。

  • 企業は、毎年4月にその年に卒業する学生を一括採用する。
  • 新入生は、機能別組織に配属され、研究、製造、営業、管理など職能別に研鑽を受ける。
  • 企業は、それぞれ個人の能力、適性と成長性を勘案し、計画的に人材を異動・配置する。
  • 個人は、それぞれの能力を顕在化し、その企業内の専門職または経営者として機能する。
  • それぞれの適性が発揮されないと評価された個人は、企業から排出され別の道を探す。

バブル崩壊によるパラダイムの転換

このパラダイムは、組織主導、各組織の規範が階層的に働く、企業内での終身雇用が原則。ところが、バブルの崩壊は、金融・証券企業を全壊させ、重厚長大企業の終身雇用を成り立たなくさせ、団塊の世代の中・高年齢者に年功序列処遇の終焉を告げたのです。

そうして、この状態に対応するために、グローバルスタンダードという考え方が喧伝されました。これからは世界との戦いになる。これまでの日本的風土に見合った日本的経営は見直さなければならない。年功的処遇は維持できない。短期的な成果に見合う報酬を与えるという考え方こそ世界で行われていることなのである、という方向です。

当時の日経連(1995)は、「柔軟な経営モデル」という考え方を取り入れ「長期蓄積能力活用型」、「高度専門能力活用型」、「雇用柔軟型」の3つの働き方を提示しました。この考え方は、正社員、プロフェッショナル、パート労働者、の活用の考え方を明確にした点で、その後の非正規社員活用によるコストダウンを、大いに助長したものと云えます。

新たな個人と組織の活性化策

そこで、パラダイムの転換というのは、まさに企業主導の効率化追求というスタンダード一辺倒が、これまでの日本の集団による創造力、改善などのモティベーションを失わせ、技術の伝承、企業風土の維持が出来なくなり、組織の力が結集できなくなっている現状に対し、個人主導で、一人一人の働き方、生き方に対する動機を、この組織で生かしてもらおう、という、まさにコペルニクス的転換の中から、新たな個人と組織の活性化を見つけ出す具体的な方策を考えたい、ということなのです。

経団連も経済学・経営学・心理学からも、どのようなやり方があるのか、はっきりと言える人が居ません。この端緒を産業カウンセリングの中から探し出したいと思います。