-第9回-人の興味の違い

tsutsumikanban

5歳になる私の孫は、プラモデルのミ二アチュア自動車に夢中になっている。その中でも、特別恰好のいいのを見てもらいたくて、指先につまんで床の上にこすりつけ、口の中でつぶやきながら疾走させる。まだカーレースは見ていないので競争の意識はなさそうだ。自分で運転しているつもりだろうが、どんな物語と共にこの車は走っているのだろうか。いろんな車がありそれぞれにブランドの名前がついているのだが、とても私の記憶力ではついて行けない。

人間はこのあたりから素晴らしい成長をし、うちの子供はもしかしたら天才じゃないかしらと思う親は決して少なくはないだろう。確かに言葉を覚え、字も読めるし、道具を使ってなにか工作物を作ったり、バイオリン教室で、小さい幼児から大学生に至る子供たちが合奏をするのを聴くと、人間の持つ創作力の可能性を信じないわけにはゆかない。
この成長のどこかで誰かがほめてくれたり具体的な指導をしたりすると、本当のプロの道が開けてゆくことも充分にありうることである。芸術の道だけでなく、科学者、文学者、アスリート、商売人の卵、こつこつと何かに集中する変人なども出てくるだろう。

ここでわれわれキャリア・カウンセラーとして経験するのは、転職を希望する人たちが、
「私はこの仕事に向いてないと思うのですが」とか、「新しいことを創り出すのが好きなので、何かを考えて完成するような職種に就きたいのです」と言われるときに、どの方向が向いているのか説明するのに適当な尺度や興味の分類があれば、と思うことがある。
そこで、心理学者ホランドの考えた職業パーソナリティ理論について説明してみよう。
ホランドは、「人の行動は、その人のパーソナリティと、その人を取り巻く環境の相互作用によって決められる。パーソナリティと環境のそれぞれについて、その特徴を分類すると
現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的、の6つのタイプにわけられる」と考えたのである。具体的な仕事への関心と職種を調べたデータを紹介すると、

現実的 機械や物を対象とする具体的で実際的な仕事や活動に対する関心が高い。
熟練技能の職業、機械管理の職業、機械・装置運転の職業、動植物管理。
研究的 研究や調査などのような、研究的、探索的な仕事、活動への興味関心が高い。

物理化学関係の職業、社会調査研究関係の職業、医学関係の職業、など。

芸術的 音楽、美術、文学などの芸術的領域での仕事や活動に対する好みや関心。
美術、彫刻、工芸関係、舞踊関係、文芸、音楽、出版関係の職業。
社会的 人に接したり、奉仕したりする仕事や活動に対する興味や関心が高い。
社会奉仕の職業、医療保健関係の職業、販売、対個人関係、学校教育、など。
企業的 企画や、組織運営、経営などのような仕事や勝度王に対する興味、関心。
経営管理関係の職業、広報・宣伝関係の職業、営業、財務関係の職業。
慣習的 データの具体的・体系的操作を必要とする仕事への興味、関心の高さを特徴。
経理事務関係の職業、文書整理、保管の職業、法務関係、編集、校正等。

「キャリアの探索と形成-キャリアデザインの心理学」益田勉 文教大学出版事業部 より。

この考え方を、職業興味テストとして、作成されたものが「VPI職業興味検査」というもので、160の職業に対する反応を記入させて6つの興味領域の高さを判定する。自分の仕事への興味、関心の方向を調べてみるのには手軽な方法である。

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この分類型のそれぞれの場所を心理学的な類似性で計算して、関係が近いものと遠いものに分け、それを6角形の図形にしたものがあり、仕事の興味が自分の内面でどのような場所にあるのかを、自分の成育歴と照らし合わせながら考えると、本当に自分は何をしたいのかを発見する手がかりになるかもしれない。