世界の年金比較

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厚生労働省の「世界の厚生労働 2013」「諸外国の年金制度(サイト)」等を参照して、欧米・アジア主要国の年金比較をしてみた。

イギリスの年金は2階建で、1階は全就労者対象の基礎年金、2階は被用者のみを対象とした年金である。2階部分はこの公的年金に替え民営年金に加入することもできる。政府が民営化を後押ししている。
男性は65歳から給付。女性は60歳からであったが、現在段階的に65歳に引き上げている。ブレア政権下で、男女とも2020年に66歳に引き上げることが決まった。その後、2024~2046年に68歳に引き上げられる予定である。
昔「ゆりかごから墓場まで」といわれた福祉国家イギリスも、高齢化と財政逼迫で保険料率は給与の約26%と非常に高く(本人が12%、残りは使用者が負担)、その割に年金給付水準はドイツ・フランスよりも低い。

ドイツの年金は65歳から給付される。但し、2012~2029年にかけて段階的に67歳に引き上げられる。保険料率は約20%、年金給付水準はそれまでの給与所得の52%。
 フランスの年金は、ミッテラン政権下で給付開始を65歳から60歳へ一旦引き下げたが、サルコジ政権下で見直され、2017年に62歳に引き上げられる。また、満額年金(早期受給か満額受給かは選択)の支給開始は現在65歳であるが、段階的に引き上げられ2023年に67歳になる。保険料率は約17%。
 
 アメリカの年金は現在既に66歳からの給付となっている。2027年までに67歳に引き上げられる。これは連邦政府直営の保険であるが、多くの企業で民営保険(2階建部分)が導入されている。政府直営保険の保険料率は約10%(本人負担は約4%)と高くないが、年金給付水準も高くはない。

 1970年代のドイツは定年も年金給付開始年齢も60歳だったが、高齢者は年齢引き下げを要求していた。当時のイタリアでは50歳代後半で引退し、別荘生活を楽しむことができた。イタリアより経済的に豊かなドイツの高齢者としては当然の要求であったろう。しかし、若者は負担増になると反対していた。
その当時の感覚としては、社会が豊かになって行けば、定年時期を早め、可能な限り早く年金を貰って悠々自適に過ごせるというのが、欧州先進国の考え方の一つであった。定年を60歳まで延長し、更に再雇用嘱託で働き続けた当時の日本から見て、さすが先進ドイツは違うなあと思った記憶がある。 
それがなぜ欧米先進国でも65歳まで、或いはそれ以上働くことになったかと言えば、少子高齢化の進行と福祉費増大による財政逼迫の結果である。

 アジアの現状に目を転じてみよう。
 インドネシアは65歳以上人口の割合は5%に過ぎない。高齢者の面倒は家族がみるとの伝統が残っていて年金制度は無い(公務員向け年金制度はある)。
 タイは年金制度が発足し保険料徴収を開始したのが1998年末のことだ。保険料納付期間15年以上が年金給付条件になっており、年金を最初に受け取れる人が出るのは2014年の今年からだ。55歳以上が給付対象となっている。年金給付水準はそれまでの給与所得の20%程度と低い。
 中国は、都市部と農村部で保険制度が異なる。都市部は男性60歳、女性50歳(幹部級は55歳)から、農村部は男女ともに60歳から給付される。地方によって年金額に差がある。また年金制度加入者が少なく、年金を全国に広げることが課題となっている。平均寿命が76歳と案外長寿。65歳以上人口の割合は現在10%以下であるが、2035年には20%に達する見込みであり、年金制度がどうなって行くのか予想がつかない。

 少子高齢化が地球規模で進行している。その時年金制度はどうなるのだろうか?