H25年版労働経済白書を読み解く

我国の労働経済の構造変化を、9月に発刊された本年版労働経済白書から読み取っておきたい。
まず、産業別就労者構造はますますサービス化・第三次産業化の度合いを強めている。製造業の就労者は1973年の26%をピークに下降を続け、2012年は17%まで下落した。

これに建設・鉱業・農林水産業を加えた第一次・第二次産業就労者比率では2012年は29%で、
1990年の40%、2000年の34%と比較し、かなり急速な産業構造転換が進んだことが窺い知れる。
と言ってもアメリカ及びイギリスの第一次・第二次産業就労者比率は19%、フランスが24%、ドイツが29%であるから、
日本はドイツとともに先進諸国の中ではまだ第一次・第二次産業就労者比率は高い方である。
但し製造業の海外流出が続いており、この比率は更に下降して行くと推測される。

次の注目点は非正規雇用者比率の増加である。2013年1~3月の非正規雇用者は1,870万人で全就労者の36%を占めるに至った。
このうち有期契約労働者が1,444万人で28%である。
正規雇用の減少と非正規雇用の増加が始まったのは1990年代後半である。
その時期の非正規雇用の増加の中心は女性を中心とするパートタイム雇用であった。

2000年代に入ると正規雇用の減少が加速、非正規雇用では有期契約社員の増加が中心になった。
白書は2002年から2012年の10年間に非正規雇用者が362万人増加したが、
そのうち55歳以上高齢者が246万人と全増加の68%を占めており、
高齢者の転職・再就職が非正規雇用を押し上げている主要因だとしている。

hakusho

2012年、団塊の世代(1947~1949年生れ)が65歳以上を迎え始めたが、白書は昨年65歳以上就労者が伸びたことを、一つの原因に挙げている。
今年・来年とこの傾向は続いて行こう。

さて、昨年12月に日本経済再生本部が設置され、今年6月に「日本再興戦略―JAPAN is BACK」が閣議決定された。
内容は、大胆な金融政策、機動的財政出動、日本産業再興プラン、戦略市場創造プラン、国際展開戦略といささか総花的であるが
雇用に関しては次の5項目が掲げられており、これには留意すべきポイントが含まれている。

① 行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換
② 民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化
③ 多様な働き方の実現
④ 女性の活躍促進
⑤ 若者・高齢者等の活躍推進
私には④を除く全ての項目が高齢者に向けて発信されているように感じられる。高齢者は今新たなチャレンジを求められている。日本再興の雇用面の施策は高齢者の活躍如何と言われている気がして来る。

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