意外な高齢者労働力率の推移

Q1、東京オリンピックが開催された1964年から現在までの半世紀(50年間)に日本男子の平均寿命はどう変わったか?

Q2、この間に企業の定年年齢はどう変わったか?

Q3、60~64歳の男性のうち就労している者の割合(労働力率)はどう推移して来たか?

 

 

 

 

答えてみてください。

 

 

 

 

正解はそれぞれ次の通り。
A1、平均寿命は67.67歳から79.59歳へと12.90歳伸びた。

A2、企業の定年年齢は、一般的に55歳だったものが60歳以上になった。現在60歳定年の企業が80%強、65歳定年の企業が13%以上もある。

A3、60~64歳の男性の労働力率は、グラフの通り1964年当時82%超だったものが1986~1987年まで下降を続け、
その後多少の回復もあったが(1994年の60歳定年義務化の影響もあり)、2004年に70%強のボトムを打ち、
2006年からは改正高齢者雇用安定法(65歳までの雇用義務付け)の影響で上昇に転じている。
しかし2011年時点でも76%であり半世紀前の高齢者ほどには働いていないのが実情である。
60-64歳の労働力率グラフ

 

意外である。
実は、1970年までの高齢者労働力率の下降は自営業(農業などを含む)の減少による。
また1970年代からの下降は、年金給付の充実により働かないでも何とか食っていける環境が整ったためだ。
昔の人は早々55歳で定年を迎えたが、生活資金を稼ぐために継続して働くことを希望し、企業の側も嘱託や子会社社員等として引き続き雇用継続させることが出来た。
ベテラン高齢者の担う業務もいろいろあったということだろう。
その後企業の競争環境が厳しくなり、人件費も高くなったため余剰の高齢者を継続雇用する余裕は無くなった。
年金給付の充実で高齢者も働かないでも何とか食えるようになった。
長らく下降傾向にあったが、ようやく2006年から65歳までの継続雇用が義務付けられたことで高齢者労働力率の持ち直しが徐々に図られつつある。
果たして今後はどうなって行くであろうか?
高齢者労働力率のこうした過去の推移を概観して感ずるのは、高齢社会の将来の財政に深刻な懸念が生じている時に、寿命も伸び昔より元気な高齢者を活用しないのは逆行ではないのかということである。
マクロ的にその通りだとしても、そのためのミクロ的な仕組みが確立されていない。そこが問題である。
知恵を出してこの問題を解く鍵を見出さねばならない時を迎えているものと思う。