加速するフォークリフト業界の再編


ここ数年でフォークリフト(リンク先:コトバンク)業界の再編が急速に進んだ。それは地殻変動にも近い。
2012年8月日立建機系のTCMと日産フォークリフトが産業革新機構の資本協力を得て、ユニキャリアホールディングスとして統合された。
翌2013年4月、日本輸送機と三菱重工のフォークリフト事業部門が統合され、ニチユ三菱フォークリフトとなった。
そのニチユ三菱フォークリフトがこの2015年7月中に1000億円超でユニキャリアホールディングスを買収することで基本合意する見込みである。順調に運べば、年内にも吸収統合が実現しよう。

先進諸国のフォークリフトの需要は飽和状態に近いが、発展途上国では引き続き旺盛な需要の伸びが期待できる。中国だけで年間20万台以上が売れており、世界のフォークリフト販売台数は2014年に100万台を超えた。
世界シェアは、豊田自動織機がトップの25%(国内シェアは45%)。2位がドイツのキオンで23%。以下、ドイツのユングハインリッヒの13%、アメリカのハイスターエールの11%、同じくアメリカのクラウンの10%と続く。
ニチユ三菱フォークリフトの現在の世界シェアは8%(国内シェアは20%)、ユニキャリアホールディングスの世界シェアは7%(国内シェアは16%)であり、統合されると世界シェア15%(国内シェアは36%)となり、一躍世界3位となる。
また、国内でもコマツ(国内シェア14%)、住友ナコ(国内シェア5%)に大きく水をあけることになる。

工場や物流センターなどで小回りを利かせて荷物を運ぶフォークリフトは、エンジン・フォークとバッテリー・フォークとに大別される。エンジン・フォークは燃費が安い割にパワーが出る。発展途上国では専らエンジン・フォークが使われている。バッテリー・フォークは価格も運転コストも割高だが、クリーンであり作業環境を重視する先進諸国で主流になっている。
フォークリフトは自動車や建設機械に比べ技術的に簡単であり、中国やインドなどのメーカーが次々と参入し、低価格競争を仕掛けている分野である。このため世界での競争は、規模のメリットを活かした部品調達、製造コストの低減、販売力の増強などとなっている。
近年は、これらに加えアフターサービスの重要性が増している。

フォークリフト用アタッチメント(荷物の形状によって本体に取り付けて使う必要があるなど様々な装具類がある)の専業メーカーがある。そうした専業メーカーの中ではアメリカのカスケードが世界最大で歴史もあったが、豊田自動織機が同社に対し株式公開買付を行い、600億円超を投じて2013年3月に買収を完了した。周辺事業の取込みとアフターサービス強化につなげようとの意図である。

一方、アフターサービス面で独自の展開を見せるのはコマツである。コマツは建設機械に導入して成果を挙げたGPS等の通信機器をフォークリフトにも装備している。それにより各フォークリフトの稼働状況をリアルタイムで把握、そのデータ分析を通じ、より効率的な運用を提案する体制をとっている。
先進的取組みと言えるが、再編が進む今のフォークリフト業界では、シェアの相対的劣勢が課題となってきており、建機主体のコマツがどこまでフォークリフトをかかえて行くのか、若干疑問は残る。建機で世界最大のキャタピラー社も昔フォークリフト事業を持っていたが、自社内では傍流事業であったため、とうの昔に三菱重工に事業売却済である。

フォークリフト事業の競争は体力勝負と見える。誰が最後まで勝ち残るか?
世界の勝者は徐々に絞り込まれてきているようにも思える。