コラム

  • シニアのための脳の話③―記憶の迷宮
    鮮明に思い出されることがある一方、重要な場面であった筈なのに、情景が浮かんでこないことがある。何かを切っ掛けとして、忘却していたことを突然まざまざと思い出すこともある。好きな人との貴重な思い出が、その人に興味を失った途端、値打ちのないものに変質してしまう。 記憶はさながら迷宮のように不可思議だ。脳・神経科学の最新の研究成果を踏まえて、この謎に迫って見た。 記憶はどう作られるか? まず、感覚を通して入って来る外部情報を大脳皮質の感覚野が把握する。言葉の場合は、言語野がその意味を理解する。それらの情報が大脳辺縁系の海馬に送られ、整理され、蓄えられる。睡眠中(瞳が活発に動くREM睡眠中)に、海馬は情報の取捨選択と整理統合を集中的に行い、記憶として蓄える。 海馬の隣に扁桃体という...