30年以上の人事経験を活かし、企業の人事制度改革プロジェクトを支える【第1回】

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シニア活用.com体験者島田さん

島田 智さん
横河・ヒューレット・パッカード(株)入社後、約2年間米国ヒューレット・パッカード社で勤務。
1999年ヒューレット・パッカードの企業分割で、計測・ライフサイエンス部門を継承したアジレント・テクノロジー(株)に移り、取締役・人事総務部門長  2012年退任。
31年間、同一会社の人事部門に在籍し、ビジネスの環境変化に対応した人事制度改革と組織・構造改革を、一貫した人事方針・戦略のもとで、ステークホルダー(国内・海外経営陣、労働組合、従業員)と緊密な連携を図りながら推進。
得意分野は、経営戦略に沿った(グローバル)人材マネジメントの構築と運用(報酬制度・人材育成・適正配置・人事情報システム)M&Aや人員調整・外注化等の構造改革の推進。
著作に、「21世紀の戦略型人事部」(共著・日本労働研究機構)  その他、職務給制度、評価制度、公募と人材開発、キャリア開発、グローバル人材マネジメント等、多数寄稿

20代はピーターパン症候群!?

-三上 2012年にアジレント・テクノロジー株式会社を退職された後、どのようにキャリアプランを考えられたんですか?

-島田さん 実は20代のころから独立して働くことを希望していました。
だから30代直前まで会社に入らず働ける方法をいろいろ模索してたんですよ。ピーターパン症候群ってやつですかね(笑)
でも、30歳目前になってこれじゃいかんと思い立って、何社か受けたんですよ。
そこで横河・ヒューレット・パッカードの管理本部長さんに人生を甘く見るなって諭されて、そのまま入社しました。
ここからはずっと30年以上人事畑です。
2012年に退職して、ついに20代から望んでいた独立して仕事する夢が叶ったんです。
ヒューレット・パッカードに入社してからも30代はね、それでも常にどうにか独立できないか考えてましたよ。
ただ腹をくくったのは会社からアメリカに語学の勉強をかねて向こうで仕事してこいと言われて、米国本社のプロジェクトに入ったんです。そこまで投資してもらって辞めるわけにもいかないなと思って腰を据えて働こうって思いましたね。

どんどん形を変えていく会社の中で

-三上 島田さんは転職はされなかったんですが、会社自体がどんどん変わっていきましたよね?

-島田さん 会社がいろいろ変るっていうのはすごく面白いことなんですよ。
人事っていうのはビジネスが変わらなければそうやることもないんですよ。
ビジネスをどうバックアップしながらそれに合った形で制度を設計していくのかがとても重要ですからね。

-三上 今の働き方は30年前に描いていた通りでしたか?

-島田さん いやいや。もっと自由だと思ってましたからね。
現実はそんなことはない。自分で時間のコントロールが出来ると思っていたが甘かったですね。
結局は、まだサラリーマンの時は時間のメリハリはあったんだけど、メリハリがなくなっちゃって。
でも精神的には楽ですよ、解放された感じはありますよね。

30年以上人事畑、退職そして・・・

-三上 会社を辞めてすぐ独立しようと動かれたんですか?

-島田さん そう思ってはいましたが、すぐ仕事があるわけじゃないので講演をしたり、セミナー講師をやったり、執筆をしたりしてました。でも実はそういうのやってるとつまらなくなってくるんですよ。
人事の仕事というのはビジネスの戦略をうまくバックアップしながらどう構築していくかに意味があるんですよ。
それに対して、講師だとか執筆は過去にやったことをまとめるようなことでリアルなビジネスとの関係っていうのはないわけですよね。
だから面白くないんです。

そこで飽きてきてしまって、いくつか人材サイトへの登録をしました。
いくつか登録する中でジーニアスは最もレスポンスが早かったんです。
すぐご連絡いただいて三上さんとお会いしてお話を進めることになった。
そういう意味で他のところとはスピーディーに進める感覚が全然違ったの。各フェーズで担当者がわかれていたりでスピード感を持って動けなかった。
私の感覚には合わなかったんです。

歴史ある上場メーカーの人事制度改革案件

-三上 現在は当社からご提案した企業の人事制度改革プロジェクトをお手伝い頂いていますね。
クライアントは中堅精密機械メーカー。
年功序列の色合いの強い職能資格制度から、役割給を導入するための人事制度改革を計画中でした。
当初は、別の人事コンサルティングファームに依頼されていたようですが、計画していたアウトプットが出ずに、一旦計画が白紙に戻ってしまっていた状況でした。

そこで実務経験が担保されないコンサルに依頼するのではなく、
人事制度改革のプロジェクトメンバーとして外部のベテランを活用してみてはどうかと提案したんです。
提案する際には私は島田さんが適任、是非お願いしたいと考えていました。
なぜなら、1つは島田さんは人事領域をオールマイティーに経験された人事マンだということ。
2つ目は、このクライアントが評価報酬制度を職能資格から役割給に変えようとしていた。
島田さんは人事のトップとして同様の制度改革を実現した経験をお持ちだったんです。
当然制度を変えるという中ではメリット・デメリットがあり、双方の良し悪しを理解して導入検討をしなくてはいけない。

-島田さん そうですね。私自身もセミナーや執筆の仕事に飽きて、
もっと経営の根幹にかかわる、今回のような人事制度を、基本理念や方向性から生み出していく大がかりな仕事をしたいと思っていました。
それができる経験をしてきたという自負もありました。
私のしてきた失敗や成功の経験はクライアントに無駄な回り道をさせない助けになるでしょう。
そういう思いで今の案件を引き受けることにしたんです。

-三上 実際にクライアントとのかかわりはどのようなものですか?

-島田さん 週に2日通い、30代の人事担当の方と共に仕事をしています。
この方は非常に誠実でポテンシャルも高く将来の有望株ですが、人事での未経験の領域があります。
また、このような大きな制度改革の経験はお持ちではないので、プロジェクトの進め方、具体的には如何に社内を巻き込んで仕事を進めるのかという方法論まで細かく話し合いながらやっています。
人事制度という専門知識をアドバイスするというよりかは、この改革をすすめる事自体を共通のミッションとして、私もそのメンバーの一員として取り組んでいます。

今は聞くのが大切。傾聴スキルが必要

-三上 会社にいた頃と比較して、通常の事業会社の人事というかは企画面にフォーカスしてアドバイサーとしてお手伝いして頂いていますが、そういう働き方はいかがですか?

-島田さん 今までは自分の所属する会社のことなので自分に決定権があった。
もちろん最終的な判断を仰ぐこともありましたけど。
それに対して、コンサルタントになると、向こうの立場を理解してそれに合ったやり方を提案する。
もちろん決めるのはクライアントだし、いかに彼らのニーズを聞きながら彼らが求めているものを提案してゆくかということに重きを置くようになりましたよね。

正直言うといままで聞くのは苦手だったんですよ。どちらかというとわがままなので(笑)
だけど今は聞くのが大切。傾聴スキルが必要ですね。私も努力中ですよ。

うまくいくコンサルタントって?

-三上 コンサルタントとして入るというのは、うまくいくケースいかないケースありますよね?
それはコンサルタント側にも、使う企業側にも問題あってのことだと考えますが、案件の成功の可否は何が違うと思われますか?

-島田さん 私が今それを語るのは早すぎると思っています。
一般的なコンサルだと、ニーズを聞いて、コンサルタントが成案を作ってこれでどうですか?という感じだと思うんです。
それをクライアントがただ採用してGOしてしまうと、結局借り物の施策になるのではないかなと思います。
むしろクライアントと一緒に作っていくというアプローチの方が距離が縮まります。

しかも人事の施策は制度作りだけではだめ、どう運用するかが大事なんですよ。コンサルタントがやりきりになっちゃうと、結局は役に立たない制度になってしまいます。
一緒にやっていけば、そこで作った人の哲学がきちんと伝えられるし、「何が目的なのか」がシェアされていれば、変に枝葉のところで引っかからない。
そんなアプローチの方がいいんではないかな?と思っています。

パートタイムの人事部長!?

-三上 今日本企業のコンサルの他に、人事部長をパートタイマーという形態でされていますが今後そういったフレキシブルな働き方の企業側のニーズは増えてゆくと思われますか?

-島田さん 私のやっているパートタイム人事部長は外資系の会社なのですが、
特に、外資っていうのはヘッドカウントに非常にシビアです。もちろんコストにも。
日本の企業はそこでいうとそこの部分の人事マネジメントしては甘かったと思うんですよ。
しかし、今後競争が激しくなると、なかなか成長が見込めない中で、どのように会社を利益を出せる強い体質の会社にしてくのかを考えた場合、無駄を徹底的に省いてくという流れになるでしょう。
そうすると、従業員だって正社員で賄うのではなくて、いろんな形態のパートやコンサルティングや、派遣などをつかって目的を達していくという人事マネージメントは必要になってくると思いますね。

-三上 今までも、事務職、アシスタントなどの基幹職以外のところは派遣などの間接雇用を活用してきましたが今後は基幹業務でも、ある程度間接雇用の方の採用も進むと思われますか?

-島田さん 会社の中核となるポストのところをどこまで委ねることができるのかとは思いますが、それを除くところであればプロフェッショナルな仕事でもどんどん外に出していくこともあると思いますよ。
今まで日本の企業は、全部自前主義でやってきてうまくいかなかったことはいろいろあると思うんですよね。

‘マス’でマネージメントをするか’個’でマネージメントをするか

-三上 島田さんは最初は日本の企業に就職されて、そこが外資に変わっていって、日本の企業と外資系企業のどちらもご経験があるわけですがカルチャーの違いは特に人事に関してありますか?

-島田さん人事の世界で言えば、大きく違うのは’マス’でマネージメントをするか’個’でマネージメントをするかなんですよ。
日本の会社は前者ですね。制度を一旦作ればそれを全員に適用するという意識は極めて高い。
それをマネージメントするのは人事でやるんです。制度を統一させるためにはどこか一か所でマネージメントしたほうがいいですからね。

外資は、人事制度はルールじゃなくてガイドラインなんです。個人をみて部署のマネージャーがガイドラインに沿って判断する。
直属の上司が人事のツールを使ってその個人に合ったマネージメントをするという意識が強いんです。
そこが大きく違うところですね。

-三上 どちらが正しいというわけではないですよね?

-島田さん そうです。そうです。
やっぱりそれはどちらも善し悪しありますね。
外資の場合は、上司と部下の個人的な関わりが強くなってしまう。
下手すると自分の上司にモノが言えないカルチャーになりがちなんですよ。だからオープンにディスカッションする文化を一方で取り入れとかないと、とてもいびつな組織になるんです。
他方で日本のやり方だと杓子定規にすべてあてはめちゃうから、柔軟性にかける。特殊な事情を勘案して意思決定が出来ないですよね。

日本のやりかたは、皆が均一に扱われ、また社内の競争も厳しくないから、従業員から自らを主張する必要がなく、受け身になりやすい。
これに対して、外資では、従業員は主張しないと自分の快適なコンディションが確保されないし、
社内競争の中で自分のポジションも安泰ではないから、ポジティブに行動していかなければならない、という感じはありますよね。

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島田智さんさんが手掛けた事例

一部上場機械メーカー人事制度改定プロジェクト